J.フロントリテイリング(以下「大丸松坂屋」と表記」の株主総会に出席した知人が、(平成23年度、平成24年2月末日締め)事業報告を含めた株主用配布資料を持っていたので拝借、なかなか読み応えがあったので銘柄評価の着目点と併せて取り上げることにしました。
結論から言えば及第点(だから増配)、大都市店舗を中心に中国人観光客も戻りつつありますので、今年度(平成24年度)も大幅な業績下方修正は無いとみて差し支えなさそうですが、まず根本的な問題点に触れる必要があります。
それは小売業が「脆弱な」業種と思われている点で、この場合の「脆弱姓」とは下げ圧力に対する粘りが利かないと言う意味です。
要は「景気悪化→個人消費伸び悩み→業績低迷→株価下落」の連想が働いて、株主が株式を手放す傾向にあり、そのため実績よりむしろ景況感に左右され易い側面が強いと言うことなのですが、裏を返せば「現実には思ったほど業績は落ち込まないので、逆に割安感が出易い」とも解釈可能です。
ですから急勾配を転がり落ちて真っ青になっている暇があるのであれば、読者各位の信頼出来る尺度で仕込み時と判断出来れば、意外と利鞘が稼げるのではないかと思料致します。
百貨店の花形と言えば、やはり「婦人服(婦人用品)」と「食料品(デパ地下)」で、これだけで売上全体の55%近くに達しますので此処が勝負所、大丸松坂屋の場合は「婦人服(婦人用品)」部門の売上が振るいませんでしたが、感触から言えば遠からず持ち直します。
むしろこの企業の構造的課題は、大丸の「進駐軍」を受け入れた「敗戦国」松坂屋のやる気の無さと、それまで問題を放置してきた松坂屋側経営陣の能力の無さにあり、松坂屋銀座店の売上高は100億円を若干上回る程度、同名古屋店で約1,100億円、大丸心斎橋店が840億円であることを踏まえると、銀座と言う一等地でこの売上高は、如何なる言い訳も許すものではありません。
幸い四季報(新春号)によると銀座店は来年(2013年)春に解体開始、隣接の駐車場(銀座に駐車場とは凄まじい経営感覚です)も取り壊し、2017年度に新装開店と言うことでそれまでの辛抱です。
ですがこれでも合格点を与えるのに少々躊躇したのは、「不動産実勢取引価格ゼロ円地帯急拡大時代」、公示価格や路線価と実勢地価に大きな乖離が生じつつある今、「不採算店舗の早期処分」は企業業績及び銘柄評価の分岐点です。
店舗存続判断基準は「パルコとの提携や増収率が高いと言った考慮すべき要因を持たない、売上高100億円前後かそれ以下の店舗は閉鎖」、具体的に列挙しますと
大丸:山科、新長田、須磨、芦屋
松坂屋(既述の銀座店は除く):高槻、豊田、そして会社に対する印象を良くする意味で大規模店舗ながら上野店
となります。
あと「富裕女性高齢者」対策が不十分と思われますが、今回は此処まで。
本日(5月28日)のレーティングから。
胡散臭い外資系三羽烏の一角D証券、
大和ハウス工業(1925)「BUY継続」(目標株価1,300円→1,400円)
独裁社長(詳しくは少々前の「私の履歴書」)の独り善がり経営の歪みが表面化してきます。
ぬるま湯の反対概念のつもりでしょうが「熱湯経営」を打ち出していますが、それって「火の車経営」の一歩手前ではないのでしょうか、弊方の見立て違いであることを祈る次第です。
(了)
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(以上小誌文責)